タイ本国で絶大な人気を誇るアーティスト、ノン・タノン(Nont Tanont)。ずば抜けた歌唱力とチャーミングな人柄で人気を博し、代表曲「โต๊ะริม (melt)」 のYoutube再生回数は一億回を優に超える名実ともにタイを代表するシンガーだ。そんな彼の日本初コンサート『Nont Tanont 1st Concert Live in Tokyo 2024』が6月22日(土)に横浜新都市ホールで開催され、大成功を収めた。今回、初来日コンサートを終えたばかりのノン・タノンに話を伺った。
初の来日公演「感動したし勇気ももらえた」
──今日のコンサート、素晴らしかったです! 会場も大いに盛り上がっていました。コンサートを終えたばかりですが、感想をお聞かせください。
ノン:ありがとうございます。楽しかったです! 予想よりも本当に楽しかった。日本のファンの方は、タイのファンと違ってシャイかな? と思っていたので、皆さんがプレッシャーになりすぎないようにショーの濃度を少し減らしたんですが、実際、ファンの方がとても良くしてくれて盛り上げてくれました。
──濃度を減らしたというのはどういうことでしょうか?
ノン:普段、僕のコンサートのペースはもっと速く進みます。歌って踊って観客のこともいじって大忙しです(笑)。でも今回は皆さんが「歌わないといけない、踊らないといけない、もっと動かなくちゃ!」 と慌ててしまい、居づらさを感じてほしくなかったので、ショーを少し変更して、心地よく過ごしてもらえるように調整したんです。
──ご自身でも「こんな発表会みたいなコンサートは初めて」と仰ってましたね(笑)。
ノン:はい(笑)。このスタイルは初めてでしたが、手ごたえを十分に感じることができました。ステージからも客席が良く見えました。僕たちの曲で泣いてくれた方がいたんですが、全然予想していなかったので、本当に嬉しかったです。
──「รักแรก(First Love)」や「โต๊ะริม(melt)」など、ヒットチューンも数多く披露してくださいました。会場が一体となってシンガロングしていた姿が印象的です。
ノン:よく聞こえましたし、ステージからもその光景を十分に見ることができました。タイ語はとても難しいのに、あんなに歌ってくれてとても嬉しかったです。感動しましたし、とても勇気をもらえました。
──楽曲の素晴らしさだけでなく、ユーモラスな性格も愛されていることが伝わってきました。
ノン:ああ(笑)! そう、僕は冗談が好きなんですよ(笑)。
──先日タイで開催された『THE CONCERT APPLICATION Presents THE KINGDOMS CONCERT』は、日本からも多くの方々が視聴しました。反響はいかがでしたか?
ノン:まず、日本からの視聴数が多かったことに驚きましたし、とても嬉しかった。その気持ちを伝えたいと思い、日本語を練習して、今回のコンサートでは日本語をたくさん話しました。
──そういえば今回披露された新曲「White Flag」は、『THE KINGDOMS CONCERT』で共演されたJeff Satur(ジェフ・サター)さんともコラボされていますね。
ノン:ジェフとは昔からの付き合いで、彼の活躍をずっと見ていました。実力のあるアーティストです。彼の歌のスタイルと僕のスタイルは合わないだろうと一般的に思われていたと感じますが、「そんなことはない。一緒に出来るんだ」ということを証明したかった。可能にしたかったんです。幸い、お互い時間が取れたので今回のコラボに至ったというところです。彼の実力は素晴らしいですよ。本当に。一緒に作品が作れて光栄でした。
――ノン・タノンさんの楽曲はタイ国内外問わず多くのアーティストにカバーされています。藤井 風さんがタイで公演を行った際に、「โต๊ะริม (melt)」を披露されたのはご存じでしたか?
ノン:もちろん知っています! 当日、友だちがコンサートに行っていて、「おい!藤井さんがお前の曲を歌っているよ!」と、動画を送ってくれました。とても光栄でした。
──いいお友達ですね。
ノン:はい。ともだち(日本語で)
──ともだち。
ノン:ともだち(日本語で)。アハハ、覚えた。以前から藤井さんの作品が好きで、特に「まつり」が好きなんです。格好良くて。(日本語で少し歌う)。なので本当に嬉しかった。すぐにSNSでタグ付けして(笑)。……(自身のスマホを見せながら)ほら、少しだけメッセージのやり取りをさせてもらったんですよ。
──(スマホには藤井さんの「ありがとうございます」というメッセージが。)すごい! 感動しています!
ノン:すぐにタグを付け返してくれました。地球は思っていたより狭いですね(笑)。
──本当に(笑)。今度来日した際には、ぜひ歌ってほしいです!
ノン:アハハ。
日本で特に好きな場所は……奈良!
──海外公演にも良く行っていらっしゃいます。海外に行かれる際に持っていく必需品はありますか?もしあれば教えてください。
ノン:移動時に欠かせないものは、小さな枕、ピローです(笑)。なくてはならない必需品です。あれがないと眠れない(笑)。
──喉のケアは?
ノン:そこまでしてない(笑)。
──本当ですか?(笑)
ノン:本当に。しいて言えば2つ。好きなもの、食べたいものを食べて、やりたいことをやる。あとは、初めてステージに上がった時と同じ気持ちで歌うことを意識しています。ファンの方に良い歌が届けられるよう、誠実にそこだけは守っています。
──素晴らしい……。鳥肌が立ちました。
ノン:(笑)。仕事はハードですが、心はシンプルです。シンプルにすると決めています。
──日本では何をするのが好きですか?アニメ、食事、旅行、どれが好きですか?
ノン:ああ! 旅行が好きですね。本当に日本が好きで毎年遊びに来ています。特に好きなのは奈良県。鹿が大好きです。タイではなかなか見られないんですよ、鹿は。そんなに人懐っこくない動物だと思うのですが、僕がおせんべいを持っている時だけ寄ってくる(笑)。おせんべいを上げると嬉しそうに食べてくれる鹿もいれば、一度口にくわえてすぐにペッペと吐き出し踏んづけてどこかに行く鹿もいる。きっといろんな人におせんべいをもらってお腹がいっぱいなんですね。その姿が面白くてかわいくて。
──想像がつきます(笑)。
ノン:『タイフェスティバル』もよく知っていますし、『パクチーフェスティバル』も知っていますよ。
──『パクチーフェスティバル』?
ノン:知らないですか? パクチーを沢山食べられるんです。友だちが行きました。
──今度行ってみます! 最後に、日本のファンの方へ一言お願いします。
ノン:はい! 日本のファンの皆さん、サワッディークラッブ。SNSなど、皆さんからのフィードバックはずっと拝見していて、いつか日本に演奏に来たいなと前からチャンスを窺っていました。今回それが叶ったのですが、予想していたよりもずっと素晴らしかった! 僕たちは日本で演奏できるのをとても楽しみにして、準備してきました。工夫できるところは工夫して、ショーの内容を少し調整し、皆さんが心地良く一緒に盛り上がって楽しんでいただけるよう意識していたんですが、皆さんからの反応がとても良くて、結果的に僕らも思い切り楽しめました。僕たちを歓迎してくれて、頑張って体を動かしたり、一緒に歌ってくれたファンの皆さんに本当に感謝しています。ここでの演奏は僕にとってもチームにとっても意味のあるものです。僕はプライベートでほぼ毎年日本に来ていますし、本当に大きな意味があります。是非、また日本に演奏しに来たいなと思っています。また会いましょう!
コンサート終演直後であったにも関わらず、疲れも見せず、笑顔で話を聞かせてくれたノン・タノン。インタビュー前に廊下ですれ違った際、「お待たせしてすみません。今日はありがとうございます。もう少し待っていてくださいね」とワイをしながら丁寧に挨拶をしてくれた彼は、スーパースターでありながら決しておごらず、高ぶらず、周囲の状況をよく観察し、皆が快適に過ごせる最適解を常に模索する素晴らしい人物であった。美しく力強い彼の歌声を、ぜひまたこの国で聴くことができますように。
取材:渋谷のりこ 通訳:Pop先生(Study_ThJP)